学び

頭が良くなる?虫捕りが子どもに与える学びや影響・効果を考えてみた

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  • 虫捕りをすると頭が良くなるって記事を見たけど本当?
  • 親は虫が嫌いなので、子どもに虫捕りをさせるのはちょっと…

子どもと公園で遊んでいると「子どもが虫に興味を持つ」という時期が必ず訪れます。

ダンゴムシやてんとう虫といった小さくて可愛らしい虫であればまだいいですが、セミやカマキリなど本格的な虫となると虫嫌いの親にとっては素直に喜べないこともあるのではないでしょうか。

この記事では、そんな悩みを持つ親の皆さんに虫捕りを通じて子どもが得ることができる学びや影響・効果を紹介します。

虫捕りを通じて子どもに様々な良い影響があるとしたら夢中になって虫を追いかける子どもを今以上に応援できるようになるでしょう。

結論、虫捕りをすることで「頭が良くなる」ということを耳にしますが、正しいとは一概には言えません。しかし、頭が良くなるための学びの基礎や自己肯定感の向上には大きく影響があると考えます。一つずつ紹介をしますので、ぜひご覧ください。

コミュニケーション能力が向上する

虫捕りを通じて子どものコミュニケーション能力の向上が見込めます。

こちらは家庭よりも保育園や幼稚園・小学校で育まれることが多いです。

園や学校では、子どもたちが自由に外で遊ぶ「自由遊び」や「休み時間」という時間があります。

虫好きの子どもは、友達と一緒に木にとまるセミや土の中にいる幼虫を見つけたり、飛んでいるチョウを追いかけたりします。

「どうやって捕まえよう」や「次はあっちを探してみよう」など会話が生まれ、友達とコミュニケーションを取る機会が多くある分友好的な能力が身に付く可能性が高くなるのです。

課題解決能力が備わる

虫捕りをすると課題を解決する能力が養われます。

子どもは無意識のうちに虫を捕まえるためにはどうすれば良いのかを常に考え行動しています。

実際に虫捕りをする子どもに照らし合わせて考えてみましょう。

例 チョウを捕まえる子ども

  1. ひらひら飛んでいるチョウを捕まえようと闇雲に網を持って追いかける
  2. 子どもの足よりもチョウの動きが早いため、案の定逃げられてしまう
  3. どうして捕まえられないのかを考える
    →自分よりもチョウの動きが早いから。
    →真っ直ぐではなく、いろんな方向に飛んでいく。
  4. どうすれば捕まえられるかを考える
    →花にとまっているチョウを狙う
    →遠くに飛んでいるチョウを勢いよく追いかけるのではなく、自分のところに向かってきたチョウを狙う
    →動きが早いチョウではなく、遅いチョウを狙う
  5. 自分で考えた方法でチョウを再び狙う
  6. 結果、チョウを捕まえることに成功する

このように虫捕りを行う中で、子どもはチョウを捕まえるという課題を解決するために、試行錯誤を繰り返しています。

これは業務改善のフレームワークである「PDCAサイクル」の考えにも似ているのではないでしょうか。

自己肯定感の向上につながる

虫捕りは自己肯定感の向上につながります。

虫を捕まえることで、「ぼく・私が頑張って虫を捕まえられた!」という成功体験を積み重ねることができるからです。

我が家の子どもの場合、捕まえたイナゴを虫かごに入れようとするも何度も逃げられていました。しかし諦めずに何度も捕まえ直して見事虫かごにイナゴを入れられた時の叫びながら喜んでいる姿は今も印象に残っています。

成功体験の積み重ねは自己肯定感の向上につながり、「次はもっと大きい虫を捕まえよう」や「違う種類のセミを探してみよう」など物事をポジティブに考えるようになります。

また、図鑑で虫の名前を知り、友達にその虫の名前を教えることで、自信がつきます。

子どもの成長の上で自己肯定感を高めることは必要不可欠なことです。

虫捕りを通じてハードルの低い様々な挑戦を子どもに体験させてあげてください。

五感を刺激する

 虫捕りは人間の五感である「視覚」、「聴覚」、「触覚」、「嗅覚」、「味覚」を刺激してくれます。

  • 視覚…虫を探す、虫を観察する
  • 聴覚…虫の鳴き声を聞く、虫を探す際に周りの音に耳を傾ける
  • 触覚…虫を触って柔らかい、固い、トゲトゲしている事を感じる
  • 嗅覚…虫や花、土など自然の匂いを感じる
  • 味覚…虫捕り中に不意に口に入る汗の味、樹液や花の蜜をなめる

 虫捕りは五感全てを駆使することができるため、脳が活性化され、子どもの知的発達が促進されます。最近では、「観察」ではなく「感察」と書くことが多くなりました。

 我が子は視覚が発達した(?)のか、大人が気が付かない小さな虫を家族で一番に発見して、教えてくれることが増えました。

運動神経の向上

運動神経の向上に虫捕りは大変向いているでしょう。

虫捕りをする場合、多くの子どもは飛んでいる虫を追いかけるため、大人の想像以上に走ります。

数十メートル先に見つけたチョウやトンボに迷いなく向かっていく姿は微笑ましいですよね。

脚力の他にも網を振り続けることで、腕や体幹の筋肉を使用します。また、足場の悪い森や小高い山は、身体全体の筋肉を使用し、バランスを取りながら登ります。

アメリカの医学者であるスキャモンは、5〜8歳ごろを神経回路が著しく発達する「プレゴールデンエイジ」としています。

「プレゴールデンエイジ」の期間は身体全体を使った遊びが良いとされるため、虫捕りは運動神経の向上に適していると言えるでしょう。虫捕りをはじめとした外遊びをどんどん子どもに体験させてあげてください。

学習の基礎を身につけられる

虫捕りをしたり、虫を観察していく中で、子どもには学習の基礎が自然と身につきます。

調べる習慣が身に付く

子どもが虫に対して「なぜ?どうして?」と疑問・関心が生まれた際、すぐに答えず、ぜひ図鑑を使って調べることを提案してください

虫捕りをしていく中で子どもは虫や自然に関する様々な疑問に直面します。

  • なぜいろんな色のセミがいるんだろう
  • このセミはなんていう名前なんだろう
  • セミはなぜいろんな鳴き声がするんだろう
  • カブトムシを飼いたいけど何を食べるんだろう

子どもは大人に答えを求めてくることがあるかと思いますが、その時は「一緒に図鑑で調べてみようか!」と提案をしましょう。

子どもが興味・関心をもった事を調べる習慣を身につけることができるチャンスです。

ネットで検索をすればすぐに答え(結果)を見つけることができます。

しかし、図鑑で調べることにより、「目の前にいるセミが図鑑に載っているどのセミなのかをじっくり観察する」という視覚への刺激が生まれます。

さらに図鑑は、セミのページにサナギから成虫になる様子や寿命など関連内容も掲載されているため、名前だけではなく、生態なども知ることができるのです。

以上の経験を通して、子どもは「わからないことは調べればわかる!」という当たり前のことを、成長していく過程で非常に大切な事を学び、身に付けてくれるでしょう。

虫捕りの際は、すぐに調べることができるよう、図鑑は持ち運び用のコンパクトなものと、家で子どもとゆっくり読むことができる大型版と2つのタイプを用意すると良いでしょう。

文字や数字を覚えられる

虫に関する疑問は図鑑を使って調べようと紹介しましたが、子どもは図鑑を通して、文字や数字を覚えることもできます。

図鑑は虫の写真が多い反面、虫の名前や解説で、ひらがなやカタカナ、漢字も使用され、虫の寿命や大きさを表す際には数字も使用されているからです。

子どもは大好きな虫に関する図鑑を眺めているだけで、自然と文字や数字に触れる機会が増えます。

5歳になった我が子もひらがながある程度読める様になってきました。

絵本やテレビで出てくるひらがなを見て「これは「せみ」の「せ」と同じだね!」などと嬉しそうに教えてくれる機会も増えています。

また、こども園に「世界の昆虫標本展」というテーマで講演に行った時の話になりますが、5歳の男の子が展示した標本を見ながら、皆がいなくなった後も一生懸命にカタカナの虫の名前を紙に書き写していた姿がとても印象的でした。

虫に関することを調べる際は、すぐにネットで検索するのではなく、図鑑を開いて子どもに多くの文字と数字に触れる機会を提供してあげましょう。

命の大切さを知ることができる

虫捕りをすることで、子どもは命の大切さ・尊さを知ることができるでしょう。

虫捕りやその後の飼育を行っていくと避けては通れないのが虫が死んでしまうことです。

虫を捕まえる時、小さな子どもは網を地面に叩きつけるように振ります。網の中央に虫がいれば上手く捕まえることができますが、フレーム部分にいた場合、網を叩きつけた衝撃で虫は死んでしまいます。

捕まえた虫を家で飼う場合も、子どもが飼育を忘れて放置していると虫が動かなくなっているということも起こるでしょう。

虫は子どもでも簡単に殺してしまうことができ、それが罪に問われることはありません。

必死に捕まえようとした虫や飼育していた虫が死んでしまった時、子どもは小さな虫にも「命」があることを学びます。

虫が死んでしまった際は、子どもを叱りつけるのではなく、「どうして死んでしまったのかな?」と命や死について子どもが考える機会を作ってあげましょう

NHKの子どもからの疑問や質問に答える「夏休みこども科学電話相談」という番組の中では、過去に次のような質問がありました。

「餌をあげて一生懸命飼っていたカブトムシが死んでしまいました。なぜ死んでしまったのですか?」

先生は、「どんなに一生懸命育てても、虫も人間と同じで寿命というのがあるんだよ」と答えていました。

名前を付けて飼っていたり、餌を上げるとすぐに食べてくれる姿を見ると、いとおしく感じることがあります。その虫が死んでしまった時は、悲しみに浸るとともに、小さな虫にも寿命があること、そして生きものの命の尊さ・大切さを知ることになるのです。

まとめ

以上のように虫捕りをすることで頭が良くなるということを結論づけることは私はできないと考えます。

しかし、身体全体で虫や自然に向き合うことで、身体機能や五感、社会性の成長に大きな影響を与えることは間違いありません

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親が「虫は気持ち悪い」「虫は嫌い」と虫に対してマイナスなイメージを口にすることで、虫に興味がある子も「虫=悪いもの」という思考になってしまいます。

虫が苦手な親も多くいらっしゃると思いますが、「虫捕りは子どもの成長に繋がる」ということを理解いただき、ぜひ温かい目で見守ってあげてください。

ABOUT ME
管理人(とんぼ)
管理人(とんぼ)
東京都生まれ。虫捕り歴65年。 葛飾区で幼少期を過ごし、子どもの頃から虫が大好き。 虫の中でも一番好きなものはとんぼで、30歳の頃に日本トンボ学会へ入会。 仕事をしながら自然保護を目的としたNPO団体を友人と設立。ほかにも幼稚園や保育園、小学校や大学で虫に関する講演を行い、仕事をリタイアした現在もむしに関する活動を続けています。
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