ゴキブリは本当に悪者?子どもに伝えたいゴキブリのいいところと歴史

突然ですが、あなたはゴキブリが好きですか?嫌いですか?
おそらく、好きという方はとても少ないと思います。若い女の子ならきっと、「嫌いに決まっているでしょ!チョーキモい、サイテ―、ちょっとヤバくない?…」って、言いそうですね。
今回は、嫌われ者の代表とも言われ続けたゴキブリのお話をします。
意外と知らなかったゴキブリの良いところ、役に立つところもありますので、怖がらずに最後までお読みください。
この記事では、「画像を表示する」をクリックするとゴキブリの画像が表示されます。苦手な方はクリックをしないようご注意ください。
恐竜より古い!ゴキブリの歴史と名前の由来

ゴキブリの歴史は古く、遥か昔、恐竜のいた時代よりももっと前の、2億5千万年か
ら3億5千万年前の古生代に地球に出現したと言われています。
名前の由来は、御器囓り(ごきかぶり)。
御器(ご飯を入れるお碗)をかぶりつくという意味です。食べ物の残りだけでなくお椀までかじってしまうように見えるため、そう呼ばれるようになったのですね。
現在、日本では約50種のゴキブリが記録されており、在来種のヤマトゴキブリ以外は、どこが最初の生息地なのかわからない世界共通の害虫と言われています。
日本においても、クロゴキブリやチャバネゴキブリなど、ほとんどが外来種です。
しかし、約50種類のゴキブリの中で、家の中に入ってくるゴキブリは、クロゴキブ
リやチャバネゴキブリなど数種類だけです。
黄金虫の歌に登場したゴキブリのいいところ
第一印象という言葉があります。
一見怖そうでも本当は優しい人だったり、どんなに悪く嫌われ者でも、必ず長所があ
るはずです。
人間には嫌われていても、自然界に貢献しているゴキブリの方が圧倒的に多いのです。
皆さんは〝黄金虫(こがねむし)の歌〟を知っていますか?
そう、「黄金虫は金持ちだ、金蔵建てた蔵建てた…♪」というあの歌です。実は、この
歌に出て来る〝黄金虫〟は、ゴキブリのことなのです。
作詞をした野口雨情の故郷、茨城県の北茨城地方では、ゴキブリのことを黄金虫(こ
がねむし)と言います。
家の中に落として行く卵が入った袋が、がま口財布や小判に似ているからです。
ましてこの歌詞に出てくるゴキブリは、お金の蔵を建てるだけでなく、子どもに水飴を買ってきてなめさせてくれたのです。優しいですね…。

歌がつくられた大正時代、ゴキブリは食べ物が豊富で暖かい家(=裕福な家)に集まったことから、「黄金虫(ゴキブリ)が住みつく家は裕福な家」という認識が広まりました。
ゴキブリは害虫?それとも役立つ生き物?

ところでゴキブリは、本当に害虫なのでしょうか。
過去に、小学生の子ども達を対象にした自然観察会を行った際、ゴキブリが甘い樹液をなめていたので、歌に出て来る〝黄金虫〟のことを話したことがありました。
そして、子ども達にゴキブリのどこが悪いのか、どこが嫌いなのか、逆に良いところ、すごいと思った理由を聞いてみました。
- 平べったくて黒光っていて昆虫らしくない
- すばしっこくて動きが予想できない
- いきなりこっちを目がけて飛んで来る
- 汚い所を歩きまわる
- 不潔でキモい昆虫
- 害虫
- 3億年前からいるなんてすごい
- お母さんが台所をきれいにしていた
- 子どもに水あめを買って来るなんて可愛い
- お金がたまる
- 逃げるのが早くなった
- どこにでも入っていける
- 電車の中にもいた
- 何でも食べる
…ずいぶん並びましたね。
「恐竜より古い!ゴキブリの歴史と名前の由来」の中で、「約50種類のゴキブリの中で、家の中に入ってくるゴキブリは、クロゴキブリやチャバネゴキブリなど数種類だけ」と紹介しました。
では、家の中に入ってくる害虫と言われている以外のゴキブリは、どこにいるのでし
ょう。
実は、ほとんどのゴキブリは森や公園などの自然界で、落ち葉や腐った木の下でおとなしく生活しています。つまり、人間に嫌われ害虫と思われているのは、ゴキブリ全体のたった1割なのです。
ゴキブリのいいところは?森で活躍する「黒い掃除屋さん」

では、ここで少しゴキブリの良いところ、自然界に貢献しているところをあげてみましょ
う。
上にも書いたように、ほとんどのゴキブリが、ダンゴムシやゴミムシと同じように森の中や公園で生活していて、カブトムシと一緒に樹液をなめたり、落ち葉や朽ち木、死んだ昆虫など、生きものの死骸を食べていて、森や公園の掃除屋さんと言う重要な存在です。
ですから害虫ではなくて、むしろ益虫と言うべきではないでしょうか。
これで、ゴキブリは決して悪い昆虫ではないことがお解りになったでしょうか。
家の中にいるゴキブリは、排水溝の水をなめたり、ほこりがいっぱいの暖かい冷蔵庫
の下に潜んでいますが、台所に現れるのも、皆が寝静まった夜の間にこぼれた油をなめ
、汚い台所を掃除してくれている…、そう考えると納得出来ます。
グリム童話の「小人の靴屋さん」ならぬ「黒い掃除屋さん」と言ったところでしょう。
ですから、ゴキブリ退治よりもまず台所や冷蔵庫の下をきれいにすることをおすすめ
します。
なぜゴキブリを嫌うの?嫌いになる理由は「刷り込み」

国立科学博物館様HPより引用
2018年に国立科学博物館で開催された「特別展:昆虫」では、〝Gの部屋″という展
示室があり、テントウムシに似たものや、きれいな緑色をした外国のゴキブリが展示さ
れていました。
展示では、人がゴキブリを嫌いになる理由は、「刷り込み」ではないかと解説しています。大人がゴキブリを見て、「キャー」と大騒ぎすると、子どもはいつの間にか「ゴキブリは恐ろしいものだ」と刷り込まれてしまうのだそうです。
ゴキブリが怖いから、虫そのものが嫌いになったという人もいます。

研究でも注目!ゴキブリのすごい能力と未来の役割

ごきぶりホイホイで有名なアース製薬の生物研究棟には、通称「ゴキブリ部屋」という8畳くらいの研究用の部屋があって、ワモンゴキブリが約60万匹いるそうです。
ゴキブリどころか虫の苦手な方は、聞いただけで気を失いそうですね。
また、福岡大学理学部の研究チームは、ワモンゴキブリの幼虫の触角に、フェロモン
を高感度で受け入れる感覚細胞があることを発見しました。(外部サイト:福岡大学様ホームページ)遺伝子組み換え技術を活用し、麻薬などの匂いに感覚細胞が反応するようにできれば、空港などで麻薬探知犬と一緒に活躍する日が来るかもしれないとのことです。
詳細は福岡大学様ホームページ(外部リンク)をご覧ください。
また、理化学研究所などの研究グループが生きたゴキブリに極薄の太陽電池や無線通信装置を背負わせた「サイボーグ昆虫」を開発したそうです。倫理的な問題が残るものの、将来的には災害現場で幅広く活用できるとのことです。
詳細は理化学研究所様ホームページ(外部リンク)をご覧ください
良く考えてみれば、約3億年の前からほとんど形を変えないできた昆虫、その素晴ら
しさを研究材料に役立たせているわけです。
ゴキブリのいいところを知れば見方が変わる

ここまで、ゴキブリの良いところ、悪いところを書きましたが、ゴキブリがこの世か
らいなくなったら、本当に快適な世界になると思いますか?
いいえ。まず、森や公園の中の朽木や落ち葉、死んだ昆虫や動物の死体が、すぐに土に戻らなくなるでしょう。また、ゴキブリを捕食する、ムカデ、ヤモリ、クモ、ネズミなどは餌がなくなり死んでしまいます。生態系のバランスが崩れてしまうわけです。
では、ゴキブリがこのまま絶滅しないで生き残ったらどうなると思いますか?
ゴキブリは大昔から、ほとんど姿を変えずにこの地球上を生きて来たのです。この先、地球温暖化で地球上の生きものが滅びていくような時代が来ても、ゴキブリは、いつ
までも生き延びて行くような気がします。
恐竜たちが絶滅してもゴキブリたちは生き延びたのですからね。地球はきっと〝ゴキブリの惑星″となることでしょう。
さあ、あなたはどう考えますか…?